SteelWatch

日本製鉄による米国強化は鉄鋼業界の気候行動を遅らせるリスク

OMaksym Kozlenko

東京, 日本

日本製鉄によるUSスチール買収の発表を受け、国際的な気候団体スティールウォッチは、日本国内の気候変動対策を遅らせていることで知られる日本製鉄が、今度は世界の鉄鋼の脱炭素化を危うくすると懸念を示しました。

石炭を利用した鉄鋼生産は鉄鋼1トンあたり2トン以上のCO2を排出するため、 脱炭素化のためには段階的に廃止する必要があります。 しかし、日本製鉄には石炭を使用する高炉生産を終了する予定がありません。 同社は2050年になっても高炉を稼働する予定で、将来排出量を最大50%削減できる程度の不確かな技術が約束されています。

これは不十分であると同時に、同社の排出削減計画は遅すぎます。 2040年代に実施される予定ですが、これは今後数十年間、地球温暖化の2.4度上昇に沿った炭素排出と、大気汚染による地域社会への影響が抑制されないことを意味します。

日本製鉄が石炭を中心に据えることは、先月発表されたカナダの製鉄用原料炭事業への投資に表れています。 今回のUSスチールの買収により、日本製鉄のポートフォリオには国内で操業する10基の高炉に加え、8基の高炉(うち6基は米国で操業)が加わることになります。

全ての製鉄会社は全ての高炉について、グリーンスチール生産への明確な経路を示すトランジション計画を持つべきです。 しかし日本製鉄は、よりクリーンな直接還元鉄の予定策定やグリーンアイロンのサプライチェーン構築よりも、石炭を使用する計画を定着させようとしています。

石炭に加え、同社は気候変動政策を遅らせてもいます。 英国の非営利組織インフルエンス・マップは、日本、インド、韓国の企業を対象にしたスコアカードの中で、政策への影響力、カーボンプライシングへの反対、再生可能エネルギーの拡大に否定的な立場をとっている点で、同社をワースト・パフォーマーと認定しています。

日本製鉄は自らを未来志向と打ち出すことに力を注いでいますが、実際には違います。 例えば、

  • 同社が水素利用について語るとき、それは水素を利用した直接還元鉄の採用を意味しません。 彼らの言う「革新」は、高炉に水素を注入することです。 しかも、グリーン水素でなければならないとも示していません。
  • 同社は2013年からの排出量削減について謳いますが、需要減少による炉の閉鎖が理由です。 排出原単位(鉄鋼1トン当たりのCO2排出量)は変わっていません。

もし日本製鉄が単に高炉へ誤った解決策を追加することに重きを置き、気候変動対策に後ろ向きな姿勢を取り続けるのであれば、同社のUSスチール買収は世界市場における気候変動問題への取り組みに大きな足かせとなる可能性があります。

この買収はむしろ日本製鉄にとって、安定的な気候への貢献について前進の機会となるべきです。 同社は労働者や地域社会と協力し、全ての高炉の移行計画を策定すべきです。 例えば日本製鉄は米国からスクラップベースの生産技術を学び、強化することができます。 さらにUSスチールが、責任ある鉄の原料調達と生産に関する世界的枠組「レスポンシブル・スチール」のメンバーであることから、今後は会員になる方法を検討し、国際的に認証された鉄鋼への移行を迅速に進めるべきです。

「日本において日本製鉄は自身を鉄鋼業界さらには脱炭素化のリーダーそして革新者と称していますが、現実は大きく異なります。石炭を原料とする高炉の生産を倍増させ、2050年までの目標を不十分なものにしようとしているのです。」と、スティールウォッチのディレクター、キャロライン・アシュレイは話します。 「 もし同社が石炭依存および後ろ向きなマインドセットを新たに米国へ輸出するなら、世界の脱炭素化を後退させることになるでしょう」

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スティールウォッチ アジア・コミュニケーション&リサーチ・オフィサー 松本志織

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スティールウォッチについて: スティールウォッチは、2023年6月に設立された国際的なキャンペーン団体で、世界的な野心をもとにグローバルチームで構成されています。 ビジョンとして掲げるのは、活気に満ちたゼロエミッション経済を支える鉄鋼業界です。 データの公開、市民社会の声の影響力を高める取り組み、企業パフォーマンスの精査、そして鉄鋼企業が投資の流れを迅速に変えるよう直接異議を唱えることを通じて、鉄鋼業界に「早急な気候対策」をもたらしていきます。

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