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鉄鋼生産は今も、世界で極めて排出量の多いセクターの一つであり、世界の炭素排出量の約1割を占めている。長寿命の設備と資本集約的な生産によって成り立つこの業界では、主要な鉄鋼メーカーによる意思決定や対策の遅れが、世界の気候変動の行方を大きく左右することになる。
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本日発表された、国際気候NGOスティールウォッチによる初の「鉄鋼企業スコアカード」[1]の調査によると、対象鉄鋼メーカー18社のうち、脱炭素への移行に必要な準備が整っている企業は1社もなく、中でも日本企業は遅れを取っていることが明らかになった。本調査は2024年度までの企業の公開データに基づく。
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鉄鋼業界は「鉄鋼産業の排出削減は困難だ」との立場を長年守り続け、その不十分な気候変動対策への責任を問われることが限られていた。また、緊急性を伴う脱炭素化への取り組みとは、具体的にどのような行動を指すのかを精査するのは難しく、企業データは複雑な報告書や断片的な情報開示に埋もれ、実際に進展を見せている鉄鋼メーカーがどこか、把握することは困難だった。これらの課題を払拭するために発表された新ツールは、主要鉄鋼メーカーの脱炭素に向けた進捗を比較分析し、気候危機下に求められる行動を明らかにする。
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目的と対象範囲 スティールウォッチ鉄鋼企業スコアカードは、高炉-転炉法(BF-BOF)で鉄鋼を生産する11カ国の鉄鋼メーカー18社の移行の状況を比較評価するために開発された。 本スコアカードは、以下の目的で設計している: 移行に関連する共通の指標に基づき企業同士を比較すること。 石炭からの脱却、気候目標、グリーンアイアンの使用、社会・環境への責任の観点から、求められる水準について明確な基準を設けること。 各企業の公開情報を精査・整理し、メディア、投資家、政策立案者、市民社会がさまざまな国・地域で活用できるような、比較評価を提供すること。 スコアカードは、スティールウォッチの鉄鋼企業移行トラッカー(2025年末に英語の初版公開、日本語版は2026年1月に公開)を基礎としており、2024年度の企業別データ(年度末までの公表分のみを含む) を中心に構成している。スコアカードで評価の対象となるサステナビリティ関連指標の定義は、トラッカーの「分析手法」に記載されている。また、高炉のリライニング改修、今後の事業計画、SBTiおよびResponsibleSteel認証といった追加情報については、2025年10月までに公表された情報を考慮した。それ以降に発表された事業計画はスコアには反映されていないが、可能な限り本報告書の記述部分において言及している。 謝辞 スティールウォッチは、データ評価および方法論の策定において多大な貢献をいただいたグローバル・エネルギー・モニター(GEM)、エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)、リード・ザ・チャージ(LtC)、Solutions for Our Climate(SFOC)、ワールド・ベンチマーキング・アライアンス(WBA)を含むパートナー団体ならびにテクニカル・アドバイザリー・グループ(TAG)のメンバーに、深く感謝申し上げる。なお、本評価の方法論およびスコアに関する最終的な責任はスティールウォッチに帰属する。 企業の選定 本スコアカードは、高炉-転炉法(BF-BOF)を採用する鉄鋼メーカー18社を対象としている。これらの企業は、次の2つの基準で選定された。 規模:世界鉄鋼協会の粗鋼生産量上位100社のリストから、主要な鉄鋼生産国における大手企業を中心に抽出する。 地理的多様性:高炉-転炉法を採用する鉄鋼メーカーを、1国につき最大2社まで対象にすることで、鉄鋼生産上位10カ国より少なくとも1社は含まれるようにする。 選定された18社は、高炉-転炉法を採用し、かつ地理的に分散しており、合計で世界の粗鋼生産量の4分の1近くを占める。 カテゴリーと配点 各企業は、次の5つのカテゴリーに基づき評価される。これらは、ニア・ゼロエミッションの生産体制に向けた確実かつ迅速な移行を実現するための中心的な要素を捉えることが意図されている。各カテゴリーの配分は以下の通り。 石炭からの脱却 25% 低排出な鉄鋼生産の拡大 25% 気候関連対策実績 15% 目標と透明性 15% 社会・環境への責任 20% 各カテゴリーは、いくつかの指標に基づき採点が行われ、各指標は次の観点により構成されている。 方向性(「値が大きいほど高得点」あるいは「値が小さいほど高得点」) 配点範囲(0〜5点など) 算定式(線形関数、指数関数、変化率に基づく算定式)。算出にあたってはトラッカーから取得した指標値を用いる。 移行レディネスギャップ。現在のスコアと最大スコアとの差で表す。 総合スコアは100点満点で示す。総合スコアは、各企業がニア・ゼロエミッションへの移行を実現するためにビジネスモデルと生産技術の転換を実現できる能力を、総合的に反映する。100点に到達した企業は事実上、スコアカードの対象外となる。 企業規模の扱い スコアカードは、企業の規模ではなく、行動や進行方向に焦点を当てるように設計されている。 次の2つの指標に関する評価は絶対値に基づいており、企業規模の影響を受ける。 稼働中の高炉の生産能力(大量の石炭を使用する鉄鋼生産の規模と、その気候影響を示す)。 グリーンアイアンの消費量(ニア・ゼロエミッションの新しいバリューチェーン構築への企業の参画を示す)。 その他の全ての指標は、企業規模に左右されないよう、以下のいずれかを用いる: 原単位(例:鉄鋼1tあたりのGHG排出量やNOx/SOx/PM排出量等) 経年推移(例:GHG排出原単位、石炭使用量、大気汚染などが増加傾向か減少傾向か等) 割合(例:ニア・ゼロエミッションに対応可能な生産能力の割合、ResponsibleSteel認証を取得した生産能力の割合等) これにより、評価対象企業が単に大規模であるがゆえにスコアカードで不利に扱われないようにしている。ただし、大規模な高炉生産能力がもたらす構造転換リスクは、適切に反映するようにしている。 地理的差異と「共通だが差異のある責任」 スティールウォッチは、パリ協定にも反映されている「共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力」(CBDR–RC)の原則を認めている。しかし、評価対象企業は地理的に多様であり、本社所在地と事業拠点が異なる国・地域の場合も多い。また、各国・地域が地球全体のカーボンバジェット(炭素予算)をどの程度鉄鋼業界に振り分けることが「公正」なのかという国際的な合意はない。よって、本評価手法にCBDR–RCを意味のある形で組み入れることは困難である。 同時に、多くの指標は各企業における変化の方向性と速度(例:GHG排出原単位、石炭消費量、大気汚染の傾向等)に焦点を当てている。つまり、単純な企業間比較や各国の水準に基づく評価ではなく、自社の過去実績との比較も踏まえた評価を取り入れている。 スクラップ鉄を単独の指標としない理由 スクラップ鉄は排出削減に重要な役割を果たすが、短・中期的なスクラップ鉄の供給量には限りがある。本スコアカードは、スクラップ鉄の使用を単独の指標として加点対象としない。とはいえ、スクラップ鉄を使用すれば、「気候対策実績」カテゴリー内GHG排出原単位に関する指標を通じてスコアに反映される可能性が高い。 …