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鉄鋼生産における、電炉導入のGHG削減効果とは?

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JANUARY 2025: Baowu and Fortescue sign a memorandum of cooperation to advance green iron production.

世界的な気候変動対策として、昨今石炭を利用する鉄鋼メーカーの多くが電炉(EAF)の建設を発表、または着工を開始している。アルセロール・ミッタル社はスペイン・ヒホンで電炉を建設中、そして最近フランス・ダンケルクでも電炉建設計画の再開を発表した。オーストリアの鉄鋼メーカー、フェストアルピーネ社は2基の電炉(ドナヴィッツおよびリンツで1基ずつ)を設置中、2027年の稼働を予定している。

世界的な気候変動対策として、昨今石炭を利用する鉄鋼メーカーの多くが電炉(EAF)の建設を発表、または着工を開始している。アルセロール・ミッタル社はスペイン・ヒホンで電炉を建設中、そして最近フランス・ダンケルクでも電炉建設計画の再開を発表した。オーストリアの鉄鋼メーカー、フェストアルピーネ社は2基の電炉(ドナヴィッツおよびリンツで1基ずつ)を設置中、2027年の稼働を予定している。

日本でも電炉への関心は高まっている。日本政府は2024年度より、高炉-転炉法から電炉への移行プロジェクトの設備投資額のうち最大3分の1を負担する支援制度を導入した。これにより、日本製鉄は八幡・広畑・周南の3地区での電炉事業に計8687億円の投資を発表、うち最大2514億円が政府支援の対象となるほか、JFEスチールは倉敷での電炉新設に3294億円の投資(うち政府支援は上限1045億円)を発表した。さらに令和6年度の税制改正により、企業は高炉-転炉法から電炉への移行を通じて生産・販売される鋼材1トンあたり2万円の税額控除を受けることが可能である(一定の条件付き)。

簡単に説明すると、電炉とは投入された鉄源を大量の電力により溶かした後、成分調整を経て液状の鋼(はがね)を生産する設備のことで、「製鋼(せいこう)」と呼ばれる役割を担う。

電炉は鉄鋼生産において20世紀後半から普及し始めた。よって、決して目新しいものではない。グローバル・エネルギー・モニター(GEM)によると、現在世界で800基以上の電炉が稼働しており、さらに100基ほどが建設中で、200基近くの新設が予定されている。

電炉は電力を主な動力源とするため、直接排出される温室効果ガス(GHG)は比較的少量である。しかし、石炭を利用した高炉-転炉法(いわゆる一貫製鉄所)は、副生ガスを利用して一部のエネルギーを自給しつつ、原料から鋼材に至るまで一つの施設内で製鉄と製鋼工程の両方を完結させるのに対し、電炉は製鋼工程のみを担う。つまり、電炉単体では石炭を利用した一貫製鉄所を代替することはできない。一貫製鉄所と同じ機能を備えるためには、電炉は「電力源」および「鉄源」という2つの供給源により補完される必要がある。

したがって、一貫製鉄所と電炉単体による気候変動への影響を正確に評価し比較するためには、製鋼設備からのGHG排出量だけでなく、たとえそれらの設備が同一敷地内でない場合でも、電力源と鉄源を生産する設備からのGHG排出量についても考慮する必要がある。

電力源について、現在稼働しているほとんどの電炉は送電網からの電力を使用している。電力部門における石炭火力の縮小や再生可能エネルギー(再エネ)の拡大に伴い、電炉の間接排出量は減少しているが、鉄鋼メーカー自身がこの動きを加速させる措置を今のところほぼとっていないことには注意が必要である。新たに建設が発表された電炉やすでに建設中の電炉は、それらが大量の電力を消費するという事実にも関わらず、クリーンな発電設備への追加投資も、電力購入契約(PPA)も伴っていない。よって、電炉の脱炭素効果は、系統電力のGHG強度に大きく左右されることになる。

こうした中、日本製鉄は八幡地区の電炉新設に伴い、事業地内に4基のLNG火力発電設備を設置する計画を発表した(合計2000MW、試運転開始は2031年)。同社はこのプロジェクトを「火力発電設備で最も高効率な発電設備」と説明しているが、これを脱炭素技術と見なすのは難しい。脱炭素化プロジェクトとするならば、再エネへの投資を伴うことが望まれる。
鉄源について、電炉はとても柔軟であり、現在ではスクラップ鉄(リサイクル鋼材)の再溶解に使用されることがほとんどだが、実際には以下のいずれか、またはその組み合わせを鉄源とすることが可能であり、それぞれに気候への影響が異なる。

  • スクラップ鉄(リサイクル鋼材):鉄鋼製品の製造過程で発生する端材や、使用済み鉄鋼製品から回収された鋼材。GHG排出ゼロの鉄源とみなされる。
  • 銑鉄:鉄鉱石を原料とし、石炭を燃料とするCO2排出の多い高炉でつくられる(高炉-転炉法の高炉部分)。
  • 直接還元鉄:鉄鉱石を原料とし、高炉とは異なる直接還元製鉄法(DRI法)で作られ、石炭以外の原料、主に天然ガスや水素で操業が可能。その原料により排出量も異なる。

脱炭素化を目指す鉄鋼メーカーは、スクラップ鉄を鉄源として優先している。 現在発表されているほとんどの電炉に関しても、スクラップ鉄使用量の増加計画が言及されている。しかし、鉄鋼需要が激減しない限り、鉄鋼メーカーは需要側の製品要件を満たす十分な量や品質のスクラップ鉄を確保することは困難であると見込まれる。そのため、鉄鉱石から製鉄工程(高炉または直接還元炉)を経て作られる鉄源により、スクラップ鉄不足を補完する必要がある。

石炭を大量に使用する高炉を複数保有する伝統的な鉄鋼メーカーにとって、スクラップ鉄を補完するための鉄源確保に対する比較的容易な解決策は、少なくとも1基の高炉を維持し、そこで得られる銑鉄を新しい電炉に使用することである。しかし、銑鉄の生産は、原料から鋼材に至るプロセスの中で最も排出原単位の高い工程であるため(粗鉄1tあたり約1.4tCO2排出)、銑鉄に依存し続けることは、電炉の脱炭素効果を著しく制限してしまう。

例えば、ResponsibleSteelの認証を受けた米アーカンソー州にあるUSスチール社ビッグリバー工場には、2基の電炉が装備されている。この工場ではスクラップ鉄の使用比率が57.3%、残りは国内他拠点の高炉から輸送された銑鉄を使用し、粗鋼1t当たりのGHG排出量は1.34tCO2eと報告されている。この排出レベルは、平均的な高炉-転炉法(粗鋼1tあたり2.33 tCO2)よりはるかに低いが、平均的なスクラップ鉄のみを使用する電炉法(粗鋼1t当たり0.68 tCO2)よりかなり高いことがわかる。

USスチール社ビッグリバー工場の排出原単位と平均的なスクラップ鉄使用の電炉鋼材の排出原単位の比較からも明らかなように、電炉導入だけでは不十分であり、その電炉にどのような鉄源を投入するか、それが実際の気候変動対策としての効果を左右する。

電炉への投資は脱炭素化への一歩として歓迎される。一方で、その鉄源に関する情報がなければ、電炉が実際にどの程度のGHG排出量を削減するのか、正確に評価することはできない。

したがって、今後、特に石炭高炉を主力とする大手鉄鋼メーカーが電炉建設を発表する際、「電力源」と「鉄源」を問うことが重要であり、また、鉄鋼メーカーは、電炉プロジェクトが数千億円の税金により支援されている場合は特に、こうした情報を開示することが必要である。

執筆者: ロマン・スー(スティールウォッチ、鉄鋼アナリスト)

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