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なぜ鉄鋼か? なぜスティールウォッチか?

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スティールウォッチの活動を開始し、ワクワクしています。 しかし、なぜスティールウォッチなのでしょうか? 私たちの存在意義とは?

スティールウォッチを立ち上げた理由は、鉄鋼業が「心配だから」、「刺激的だから」、そして「気候変動に関して最も陰に隠れた分野の一つだから」です。

なぜスティールウォッチを創設したのか――ディレクターのキャロライン・アシュレイは答えます。 「それは“心配だから”、それと同時に“刺激的だから”」

スティールウォッチの活動を開始し、ワクワクしています。 しかし、なぜスティールウォッチなのでしょうか? 私たちの存在意義とは?

スティールウォッチを立ち上げた理由は、鉄鋼業が「心配だから」、「刺激的だから」、そして「気候変動に関して最も陰に隠れた分野の一つだから」です。

なぜ鉄鋼に注目するのか?

鉄鋼業は2000年以降、産業界の中で二酸化炭素(CO2)排出量が最も速く増加している部門です。 排出量が減少し始めるべきこの期間に、実際には倍増しました。

「なぜ自分のカーボンフットプリントを削減しなければならないのですか。インドと中国での増加が問題なのでしょう?」という声が欧米で時々聞かれます。1 が、鉄鋼業界の気候フットプリント(年間温室効果ガス排出量の7%)は、インドの年間総排出量に匹敵するのです。 しかし、それを知っている人はほとんどいません。

率直に言うと、鉄鋼業の方向性を急速に変えない限り、「わずか」1.5℃の気温上昇で「安定」した地球に住める希望は誰も持てません。 鉄鋼の70%はコークス炭を使用して生産されており、現在の道筋だと、1.5℃に抑えるわずかな可能性を維持するために残されたカーボンバジェット(炭素予算)の4分の1をその鉄鋼生産方法のために使い果たすことになります。2鉄鋼業界は変化していますが、1.5℃の道筋にはとても十分な速さではありません。

なぜスティールウォッチか?

鉄鋼業界の脱炭素化に取り組んでいる優れた組織がすでにいくつかあります。 では、なぜスティールウォッチが必要なのでしょうか?

第一に、鉄鋼業界は全体としてさらなる透明性と圧力を必要としています。 他の業界(電力、自動車、食肉)に比べ、これまであまり精査されてきませんでした。この原因はおそらく、国民の反発感情や、消費者ブランドの不在、「対策が難しい」とされていることにあるといえるでしょう。そんなレッテルは何の役にも立たず、取り除くべきなのですが。 鉄鋼を脱炭素化できる方法について、有力な研究がいくつか進められています。 6月15日にアゴラに掲載された最新の記事では、2040年代初頭までに鉄鋼から石炭を段階的に廃止できる実現可能性について、見解がすでに変化しています。 しかし、政策立案者の狡猾な遅延戦術や、危機感のなさ、グリーンウォッシュを声高に指摘しようとする声はほとんど聞かれません。 私たちにはそれができます。

もちろん、現在どこまで技術的・商業的に実現可能であるかという限界は、とても大きな意味を持ちます。 しかし、それを唯一の重要なこと、街の唯一の声として容認していたら、気候変動に十分に取り組むことは望めません。 気候にとって何が必要なのか、そして行動を起こさないことがどれほどの痛みを生むのかに照らしながら、何が実現可能かに目を向ける必要があります。 昨年より少し良くなっていれば十分だという想定には、声高に異議を唱えるべきです。 最初は気が遠くなるように思えても、時が経てば誰もが語るものとなる――そのような野心的な目標を追究し、競争に勝つチャンスを押し広げなければなりません。

第二に、今以上のタイミングはありません。 破壊的な変化が始まっているからです。古い習慣と想定は、変わらなければならないのです。 EU域内排出量取引制度(EU-ETS)における排出枠の無償割り当ての段階的な廃止スケジュールや、米国のインフレ抑制法(IRA)、北欧で世界初のグリーンスチール(温室効果ガスが発生しない、または排出量が極めて少ない方法で製造された鉄)生産――こうしたすべてが、人々に疑念を抱かせ、新たな方向性をもたらすきっかけとなっています。 よりクリーンな鋼材に関する鉄鋼企業の発表は、たとえ深みに欠けるとしても、加速しています。 新たに出現する分野の全体像はまだ明確ではありません。 今なら道筋と速度に影響力を及ぼすことができます。

第三に、これは緊急の課題です。 2050年にネットゼロ排出を達成するために2049年に脱炭素化するのでは遅すぎます。 2030年までに世界全体で排出量を大幅に削減する必要があると、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は非常に明確に述べています。 よって、鉄鋼もそこに加わる必要があるのです。

鉄鋼業の転換はリアルタイムで進んでいますが、長期的な投資が必要です。 それには、多額の研究開発投資や、労働者やさまざまなコミュニティとの強固な関わりが求められます。 そのため、鉄鋼企業はグリーンスチールへの移行計画を今すぐ公表し着手する必要があります。 そして、私たちはこうした計画とその実現を追跡する必要があるのです。 これには忍耐が求められますが、目の前の課題は緊急でもあります。鉄鋼業界の最高経営責任者(CEO)も漠然と把握しているようですが、それよりも緊急性は高いのです。

最後に、鉄鋼は国の誇りの源泉であるだけでなく、国際的に取引される商品でもあります。 ある国、ある大陸の力学が、別の国、別の大陸に直接影響を与えます。 そうした影響を引き起こす要因は、製造企業間の競争かもしれませんし、あるいは鉄や原料炭の供給の変化、貿易関税、投資家の要求、またはグリーンスチール需要の増加かもしれません。 さらに、変化に向けた議論や証拠を、地域を越えて巻き起こし結び付ける国際市民社会組織も存在すれば、この場の活力を高めることができるのです。 私たちは地域間で文字通りの翻訳者、さらには比喩的な意味での翻訳者となり、より深く、より速い変化を起こすことを目指しています。

市場の力学(ダイナミクス)は、まさにダイナミックです。 変化するのは技術と需要だけではありません。 人々が語ることも、基準も変わります。 社会の期待が変化するにつれて、おそらく鉄鋼企業CEOの個人的な願望すら変わっていくでしょう。 何が可能で何が不可欠かの見方が変わると、市場の規範も変わります。 私たちはこの変化の場で、小さな一つの役割を果たしていきます。 しかし、気温が上昇しながらもまだこの地球に住める可能性を求めるなら、私たち全員が協力して2030年までに変化を遂げなければなりません。

1 このような見方には多くの議論がありますが、ここでは触れません。
2 『鉄鋼生産における石炭利用に終止符を』, スティールウォッチ, 2023

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