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目的と対象範囲 スティールウォッチ鉄鋼企業スコアカードは、高炉-転炉法(BF-BOF)で鉄鋼を生産する11カ国の鉄鋼メーカー18社の移行の状況を比較評価するために開発された。 本スコアカードは、以下の目的で設計している: 移行に関連する共通の指標に基づき企業同士を比較すること。 石炭からの脱却、気候目標、グリーンアイアンの使用、社会・環境への責任の観点から、求められる水準について明確な基準を設けること。 各企業の公開情報を精査・整理し、メディア、投資家、政策立案者、市民社会がさまざまな国・地域で活用できるような、比較評価を提供すること。 スコアカードは、スティールウォッチの鉄鋼企業移行トラッカー(2025年末に英語の初版公開、日本語版は2026年1月に公開)を基礎としており、2024年度の企業別データ(年度末までの公表分のみを含む) を中心に構成している。スコアカードで評価の対象となるサステナビリティ関連指標の定義は、トラッカーの「分析手法」に記載されている。また、高炉のリライニング改修、今後の事業計画、SBTiおよびResponsibleSteel認証といった追加情報については、2025年10月までに公表された情報を考慮した。それ以降に発表された事業計画はスコアには反映されていないが、可能な限り本報告書の記述部分において言及している。 謝辞 スティールウォッチは、データ評価および方法論の策定において多大な貢献をいただいたグローバル・エネルギー・モニター(GEM)、エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)、リード・ザ・チャージ(LtC)、Solutions for Our Climate(SFOC)、ワールド・ベンチマーキング・アライアンス(WBA)を含むパートナー団体ならびにテクニカル・アドバイザリー・グループ(TAG)のメンバーに、深く感謝申し上げる。なお、本評価の方法論およびスコアに関する最終的な責任はスティールウォッチに帰属する。 企業の選定 本スコアカードは、高炉-転炉法(BF-BOF)を採用する鉄鋼メーカー18社を対象としている。これらの企業は、次の2つの基準で選定された。 規模:世界鉄鋼協会の粗鋼生産量上位100社のリストから、主要な鉄鋼生産国における大手企業を中心に抽出する。 地理的多様性:高炉-転炉法を採用する鉄鋼メーカーを、1国につき最大2社まで対象にすることで、鉄鋼生産上位10カ国より少なくとも1社は含まれるようにする。 選定された18社は、高炉-転炉法を採用し、かつ地理的に分散しており、合計で世界の粗鋼生産量の4分の1近くを占める。 カテゴリーと配点 各企業は、次の5つのカテゴリーに基づき評価される。これらは、ニア・ゼロエミッションの生産体制に向けた確実かつ迅速な移行を実現するための中心的な要素を捉えることが意図されている。各カテゴリーの配分は以下の通り。 石炭からの脱却 25% 低排出な鉄鋼生産の拡大 25% 気候関連対策実績 15% 目標と透明性 15% 社会・環境への責任 20% 各カテゴリーは、いくつかの指標に基づき採点が行われ、各指標は次の観点により構成されている。 方向性(「値が大きいほど高得点」あるいは「値が小さいほど高得点」) 配点範囲(0〜5点など) 算定式(線形関数、指数関数、変化率に基づく算定式)。算出にあたってはトラッカーから取得した指標値を用いる。 移行レディネスギャップ。現在のスコアと最大スコアとの差で表す。 総合スコアは100点満点で示す。総合スコアは、各企業がニア・ゼロエミッションへの移行を実現するためにビジネスモデルと生産技術の転換を実現できる能力を、総合的に反映する。100点に到達した企業は事実上、スコアカードの対象外となる。 企業規模の扱い スコアカードは、企業の規模ではなく、行動や進行方向に焦点を当てるように設計されている。 次の2つの指標に関する評価は絶対値に基づいており、企業規模の影響を受ける。 稼働中の高炉の生産能力(大量の石炭を使用する鉄鋼生産の規模と、その気候影響を示す)。 グリーンアイアンの消費量(ニア・ゼロエミッションの新しいバリューチェーン構築への企業の参画を示す)。 その他の全ての指標は、企業規模に左右されないよう、以下のいずれかを用いる: 原単位(例:鉄鋼1tあたりのGHG排出量やNOx/SOx/PM排出量等) 経年推移(例:GHG排出原単位、石炭使用量、大気汚染などが増加傾向か減少傾向か等) 割合(例:ニア・ゼロエミッションに対応可能な生産能力の割合、ResponsibleSteel認証を取得した生産能力の割合等) これにより、評価対象企業が単に大規模であるがゆえにスコアカードで不利に扱われないようにしている。ただし、大規模な高炉生産能力がもたらす構造転換リスクは、適切に反映するようにしている。 地理的差異と「共通だが差異のある責任」 スティールウォッチは、パリ協定にも反映されている「共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力」(CBDR–RC)の原則を認めている。しかし、評価対象企業は地理的に多様であり、本社所在地と事業拠点が異なる国・地域の場合も多い。また、各国・地域が地球全体のカーボンバジェット(炭素予算)をどの程度鉄鋼業界に振り分けることが「公正」なのかという国際的な合意はない。よって、本評価手法にCBDR–RCを意味のある形で組み入れることは困難である。 同時に、多くの指標は各企業における変化の方向性と速度(例:GHG排出原単位、石炭消費量、大気汚染の傾向等)に焦点を当てている。つまり、単純な企業間比較や各国の水準に基づく評価ではなく、自社の過去実績との比較も踏まえた評価を取り入れている。 スクラップ鉄を単独の指標としない理由 スクラップ鉄は排出削減に重要な役割を果たすが、短・中期的なスクラップ鉄の供給量には限りがある。本スコアカードは、スクラップ鉄の使用を単独の指標として加点対象としない。とはいえ、スクラップ鉄を使用すれば、「気候対策実績」カテゴリー内GHG排出原単位に関する指標を通じてスコアに反映される可能性が高い。 …
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世界第4位の鉄鋼会社である日本製鉄は、石炭を原料とする製鉄への依存のため、気候変動対策で国際基準を満たせず、競合他社にも遅れをとっていることが明らかになった。
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その時代が終わりつつある石炭を使い続ける企業は、業界をリードできるのか? 脱炭素問題の解決には、社会全体を動かすための様々な取り組みが不可欠であり、業界をリードする当社(日本製鉄)でしか成し得ない、全社の総力を挙げて挑戦するテーマです https://www.nipponsteel.com/news/20240401_200.html これは今年4月に、日本製鉄の社長から新入社員へ贈られたメッセージだ。日本製鉄が全力で脱炭素に取り組んでいる――それは本当なのだろうか? 鉄鋼業界全体を見てみると、日本の鉄鋼内需は1990年をピークに縮小を続けている。 厳しい未来に直面する日本製鉄は、国際市場に目を向け「グローバルに成長機会を掴み、脱炭素の先駆者となって、総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」になることを目指している。日本製鉄は広告でも「脱炭素化のパイオニア」と謳ってきた。 しかし、本当にそうなのだろうか。実際には日本製鉄は、世界的に遅れをとっている。同社のカーボンニュートラル・ビジョン2050は、炭素を排除するものではない。 真にクリーンな解決策で置き換えるのではなく、石炭汚染を改修する高価な技術で排出量を削減するだけなのだ。 石炭でつくられる鉄は「地球にやさしい」とは言えない 問題の核心は石炭だ。 鉄鋼業は、世界の温室効果ガス(GHG)排出量の約7%、世界のCO2排出量の11%を占めており、その主な原因は鉄鋼生産における石炭、特に高炉で使われる原料炭である。 高炉でつくられる1トンの鉄鋼は、平均2.3トンのCO2を排出する。 急速に脱炭素化が進む世界において、これでは未来はない。さらに原料炭は採掘時や製鉄時のCO2排出のみならず、燃焼時に環境汚染や健康被害を引き起こすことが知られている。 石炭の時代は終わりつつあるのだが、日本製鉄は石炭を燃やし続けることを選択しており、その気候変動対策計画は驚くほどグローバル基準に合っていないと言わざるをえない。金融格付け会社MSCIは、新日鉄の計画は破滅的な3.2℃の地球温暖化に沿ったものだと述べている。 一方、すでにライバルたちは石炭からの脱却を始めている。 日本製鉄、問われる国際競争力 韓国の鉄鋼大手ポスコはオーストラリア政府と緊密に協力し、オーストラリアでグリーン製鉄施設を開発している。 スウェーデンのH2スチールなどの企業は、石炭を完全に「再生可能水素」(再生可能な電力で電気分解して製造される水素のこと)に置き換える新製法に切り替えて鉄鋼生産を始めている。 中国の鉄鋼メーカーも水素ベースのDRI製鉄を進めている。 米国政府は、「重工業からの二酸化炭素排出を削減するための新技術に最大60億米ドルを支出する」ことを計画しており、化石燃料を使用しない水素直接還元鉄(DRI)技術であるHYBRITを使用した最初の商業規模の施設を建設するための支援を発表した。 石炭を原料とする鉄鋼の終焉は避けられず、日々その勢いを増している。 クリーンな鉄鋼への移行は世界的に進んでいるが、日本製鉄は取り残されつつある。 日本国内だけで11基の石炭高炉を操業しており、2050年までに石炭を使った生産を段階的に廃止する計画はない。 また、インドでは合弁で2つの高炉を新設し、カナダとオーストラリアでは炭鉱に投資している。世界の他の地域が石炭を使わない技術に移行する中、日本製鉄は依然として石炭が製鉄に不可欠だと考えている。 このような未来と逆行した状況で、日本製鉄に社会貢献は可能なのだろうか。 気候変動対策なくして社会貢献はありえない時代へ さらに日本製鉄がUSスチールを買収し、世界第3位の鉄鋼メーカーになろうとしていることは、非常に危惧すべきことである。同社のこれまでの気候変動に関する実績から、気候変動対策で正しい行動をとることを信頼できるのだろうか? もし石炭を燃やし続けるのであれば、急激に変化し、急速に脱炭素化が進むこの世界で、将来にわたって事業を維持し、競争力を維持することができるのだろうか? しかし、チャンスはまだ残されている。今なら日本製鉄はそのリーダーシップを発揮し、将来に向けてクリーンで国際競争力のあるビジネスを構築できる時である。労働者、地域社会、そして地球がそれを期待している。 私たちをフォローして、この問題についてもっと学ぼう。 X LinkedIn(英語) …