ホワイトハウスによる日本製鉄のUSスチール買収阻止、スティールウォッチコメント

日本製鉄は気候に悪影響を及ぼす取引を提案していた。この取引が頓挫した今、世界第4位の鉄鋼メーカーとして、戦略を見直す時を迎えている。
日本製鉄は気候に悪影響を及ぼす取引を提案していた。この取引が頓挫した今、世界第4位の鉄鋼メーカーとして、戦略を見直す時を迎えている。
14億9000万ドルでのUSスチール買収を成立させるために、日本製鉄は必死の試みとして、老朽化したUSスチールの設備などの更新に27億ドルの追加投資を公表していた。この計画には、石炭を使用する高炉をリライニング改修して稼働を延命させることも含まれていた。石炭を使用する鉄鋼生産に投資することは、今後数十年にわたり膨大な温室効果ガス排出を固定化することを意味する。また、全米鉄鋼労働組合の組合員らは、この提案が競争力のある未来を保証するものだとは認めなかった。
日本製鉄の石炭に依存した戦略は、将来性がないことが明らかである。今後USスチールの資産がどうなるにせよ、老朽化した高炉をリライニング改修することは計画に含むべきではない。
日本製鉄のUSスチール買収計画の頓挫は、同社が進むべき道を根本的に見直す必要があるという警鐘である。事業を完全に化石燃料フリーへ転換する計画を一刻も早く策定する必要があることを示している。
日本製鉄は現在、中国や韓国での資産売却を進めたうえ、今回の米国での買収の行き詰まりにより、大量の余剰資金を抱えることになる。これにより、大きな転換を図る好機が生まれている。過去の石炭燃焼に依存した時代に別れを告げ、真にグリーンな鉄鋼生産(グリーンアイアン生産など)に向けた投資を本格的に拡大するべき時だ。
日本製鉄は最近、石炭を使用せずに直接還元が可能な品質の鉄鉱石採掘に向けて、カナダでの投資を発表した。これを足がかりに、余剰の数十億ドルを使い、再生可能エネルギー由来の水素を活用した直接還元鉄(DRI)に積極的に投資することが可能だ。その投資先はカナダでも、米国でも、あるいは急速に進展しているオーストラリアのグリーンアイアンプロジェクトでも実現可能だ。グローバル企業として、未来を見据えた戦略を受け入れる準備が整えば、グリーンな鉄鋼生産への可能性は計り知れないものがある。