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グリーン水素を賢く活用することが、鉄鋼の脱炭素化になぜ重要か

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鉄鋼とグリーン水素における重要な論点とは?近年、グリーン水素が気候変動対策として過度に期待され、急速に注目を集めていたが、現実の課題に直面するにつれ、今ではその熱が急速に冷めつつある。しかし、この浮き沈みの中で重要な事実が見落とされるリスクがある。

それは、鉄鋼業界が短期的・中期的に脱炭素化を実現するには、グリーン水素が不可欠であるということだ。グリーン水素は、これまで不適切な使用方法が数多く取り沙汰されてきたが、鉄鋼業界においては例外である。気候変動の観点からも、鉄鋼の脱炭素化においては、グリーン水素の活用は効率的かつ不可欠である。

グリーン水素と鉄鋼の技術的な将来性については、まだ分かっていないことがたくさんある。本文では、現在分かっていることや推定されていることを基に、気候変動の視点から最善の行動を示すことを目的とする。

『スティールウォッチ「わかる鉄と脱炭素」シリーズ:グリーン水素』では、以下を明らかにする:

  • なぜ、鉄鋼の真の脱炭素化には、前例のない新技術が開発されない限り、グリーン水素を用いた直接還元鉄が必要なのか
  • なぜ、グリーン水素が十分に供給されるようになるにつれて、グリーン水素は優先的に鉄鋼の脱炭素化に使用されるべきなのか。水素1kgあたり、他の用途に比べて、鉄鋼ではより大きな排出削減効果が得られる
  • 鉄鋼において、さまざまな水素の使用方法がある中で、何が「良い」気候変動対策かを区別することが、なぜ重要なのか
  • 鉄鋼の脱炭素化に使用できる、十分な量の再生可能エネルギーとグリーン水素の確保が懸念される中、たとえその必要量が膨大であっても、長期的視点を持ち、今行動することがなぜ重要なのか
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まず、いくつかの論点を整理する:

  • 鉄鋼の主役は「鉄源」である。鉄源はリサイクル鋼材(スクラップ鉄)から調達することも、鉄鉱石から生産することも可能である。
  • 鉄鋼生産の排出量は非常に大きく、世界のCO2排出量の11%を占めている。そのため、鉄鋼業界の変革を行わない限り、気候変動対策は軌道に乗ることはない。
  • 「直接還元製鉄(DRI法:Direct reduction of iron oxides)」とは、高炉に代わる製鉄工程である。石炭なしでは稼働できない高炉とは異なり、DRI法は酸化鉄を還元するために幅広い還元剤(石炭、天然ガス、水素)を使用することができる。
  • 「グリーン水素」または「再生可能エネルギー由来の水素」とは、100%再生可能エネルギーによって発電された電力(以下、再エネ電力)を使用して生産された水素を指す。したがって、化石燃料を使用するグレー水素、ブラウン水素、ブルー水素とは異なる。

なぜ、鉄鋼の真の脱炭素化にはグリーン水素が必要なのか?

鉄鋼生産では毎年約3.7Gt(ギガトン)のCO2が排出される。この排出量の大部分を占めるのが、石炭を使用する高炉で、鉄鉱石を銑鉄に変える工程(製銑工程)である。

現在開発中の数多くの脱炭素化技術の中で、石炭を完全に排除し、鉄鋼生産をほぼゼロエミッションに近づけることができ、かつ商業化が目前に迫っている技術はひとつしかない。それが、水素直接還元製鉄(H2-DRI)である。この技術では、直接還元炉(DRI炉)で鉄鉱石を直接還元鉄に変える際に、グリーン水素を使って鉄鉱石に含まれる酸化鉄と反応させる。こうして生産された鉄源は、正当に「グリーンアイアン(green iron)」と呼ぶことができる。

鉄鋼における脱炭素化技術の大半は、排出量をわずかに削減するだけで、石炭の部分的な代替や部分的な排出削減にとどまるため、ゼロエミッションに近づけることはできない。現在開発している技術の中で唯一、十分な排出量削減効果を発揮する可能性があるのは、エネルギー量の大きいガスを必要としない直接電化による製鉄技術で、溶融酸化物電解(MOE:Molten oxide electrolysis)と呼ばれるものである。しかし、今後数年のうちに高炉を延命させるか閉鎖するかを決めなければならない鉄鋼メーカーにとって、溶融酸化物電解(MOE)は拡張性や適時性の点でまだ不確実性が高く、現時点での投資判断には考慮しづらい状況である。

したがって、現状において鉄鋼の脱炭素化は、グリーン水素を必要とする水素直接還元製鉄(H2-DRI)への転換にかかっている。

なぜ、鉄鋼の脱炭素化がグリーン水素の優先的な用途なのか?

グリーン水素を用いて、石炭を使用する鉄鋼生産からH2-DRIによる鉄鋼生産に転換すると、鉄鋼1t(トン)あたり2t 近いCO2排出量が削減できる。 置き換えると、グリーン水素1kgの使用につき、約25kgのCO2排出量が削減できる計算になる(下記枠内参照)。これは、現在提案されているグリーン水素の他の用途と比べると、 はるかに大きな削減効果である。

H2-DRIにグリーン水素を使用した場合のCO2削減量の推定値には、若干のばらつきがある。ドイツ連邦環境・自然保護・原子力安全省(BMUV)の資金提供を受け、ドイツ水素・燃料電池協会(DWV)の依頼で、民間コンサルタント会社が2022年に実施した調査では、DRI炉で使用する水素1kgにつき、25kgのCO2排出が回避されることが明らかになった。

この数値は以下の推計とほぼ同等である:

  • ロッキー・マウンテン研究所の推計によると、水素1kgあたり24kgのCO2が削減される
  • ティッセン・クルップ・スチール・ヨーロッパ社の推計によると、水素1kgあたり28kgのCO2が削減される
  • SMS group社の推計によると、水素1kgあたり26kgのCO2が削減される

図1:鉄鋼生産におけるCO2排出削減の可能性:水素1kgもしくは再エネ電力1TWh(テラワット時)を単位とした場合

しかし、グリーン水素の気候変動対策への有効性そのものに関して、疑問があるのも事実だ。グリーン水素の生産には膨大な再生可能エネルギーが必要であり、変換時に多くのエネルギーが失われる。そのため、エネルギーを既存の送配電網のグリーン化や、輸送用の電気自動車、暖房用のヒートポンプなどの直接電化に使う方が、より大きな排出削減を達成できると考えられている。これらは、最大の排出削減効果を現時点で実現し得る。こうした直近の優先事項を認識しつつも、鉄鋼メーカーの投資は20~40年のサイクルで行われるため、今から将来を見据え、市場や生産現場を構築していく必要がある。

高炉からH2-DRIに転換することで、再エネ電力1TWh(テラワット時)あたり、50万t以上のCO2を削減することができる。これは、CO2削減の観点から見ると、H2-DRIがグリーン水素の中でも特に効果的な使用例であり、グレーアンモニアの代替や天然ガスとの混合など、他の用途と比べてもはるかに高いCO2削減効果を実現する。

グリーン水素は、「地球規模の脱炭素化に向かう最も効果的な道筋の重要な一部」である。

これが、水素科学連合のメンバーである化学エンジニアのポール・マーティンの結論である。マーティン氏は、水素に対する過剰な期待全般に非常に批判的だが、後悔のないグリーン水素の使用方法5つのうち1つに、H2-DRIを位置付けている。

また、各国政府がグリーン水素への投資を突然停止することはないと想定する。グリーン水素が利用可能であるならば、それを鉄鋼の脱炭素化に使用することが気候にとって大きな価値があることを今から示していかなければならない。

気候の視点から見ると、グリーン水素の用途として、鉄鋼の脱炭素化が最優先されるべきだ。

鉄鋼の脱炭素化において、水素はどう使用されているのか?

鉄鋼の脱炭素化における水素利用についてよく誤解されがちなのが、H2-DRIによる鉄の還元だけが水素の使用方法ではないという点だ。他に2つの使用方法があり、それぞれ気候対策への効果が大きく異なる。

高炉への加熱水素吹込み

水素は、還元剤として高炉に吹き込むことで、石炭由来の還元剤を部分的に代替することができる。しかし、高炉は石炭由来の還元剤なしでは稼働できないため、加熱水素吹込みによって高炉や石炭の使用がなくなるわけではない。高炉に吹き込む水素1kgあたり、約10kgのCO2排出量が削減される2と推計される。

回収されたCO2と水素を反応させ再利用する

水素は、炭素回収・利用・貯留(CCUS)技術のうち、炭素利用(Carbon Utilisation)の原料として使用することができる。回収されたCO2に水素を反応させることで、合成燃料などの化学製品を生成し、CO2を再利用することができる。これは鉄鋼業界に特化した技術ではないが、一部の鉄鋼メーカーはCO2を回収し、排出量削減を行う取り組みの一環としてこの技術に言及し、計画している。

グリーン水素を、CO2再利用の原料として使用するのは、H2-DRIに使用するのと比較して、排出量削減の観点から非効率的である。水素1kgあたりわずか7kgのCO2しか再利用できず、そのCO2は将来的に再び放出される可能性がある3。また、CO2再利用に水素を原料として用いることで、石炭を使用する鉄鋼生産に終止符を打てるわけではないことに留意しなければならない。さらに、鉄鋼生産にCCUSを導入する際の大きな障害である、「回収される排出量の割合が不十分」という課題については何の解決策にもならない4。つまり、CO2再利用では、鉄鋼生産をニア・ゼロエミッションにはできない。 したがって、鉄鋼メーカーがグリーン水素の使用方法につい語る際には、どの用途について論じているかに留意することが重要である。高炉への加熱水素吹込みと、水素をCO2再利用の原料とすることはいずれも、高炉からH2-DRIに置き換える場合よりも、グリーン水素1単位あたりのCO2削減ポテンシャルがはるかに低い。

図2:鉄鋼の脱炭素化におけるグリーン水素1kgの使用方法と、もたらす削減効果

鉄鋼の脱炭素化に必要なグリーン水素の量とは?

現在の技術では、直接還元鉄1tを生産するために少なくとも54kgの高純度水素が必要である。仮に、今日におけるバージン鉄(鉄鉱石由来の鉄源)の総生産量(年間約13億t)を脱炭素化する場合、年間7000万tを超えるグリーン水素が必要になる。

今後数十年間、グリーン水素は供給拡大のほかにも多くのことが変化するだろう。その中には、予測できないものもあれば、予測できるものもある。スクラップ鉄の供給が増加するにつれて、バージン鉄の需要は減少することが予測されている。国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)のネットゼロ排出(NZE)シナリオでは、2050年にはバージン鉄の生産量が減少する(年間約10億tになる)と想定されており、この場合に必要な グリーン水素は年間約5400万tになる。

グリーン水素の生成において重要な要素の一つは、再エネ電力である。現在の電解装置の性能では、2050年に5400万tのグリーン水素を生成するには、2,700TWhの再エネ電力が必要となる。これは、現在のEU全体の年間電力需要量に相当する。

これらは非常に膨大な量であり、現時点の基準では、生産面でもコスト面でも実現が困難であるように思える。現状を踏まえると、今日の実情と将来の推定値との間には大きな隔たりがあることが明らかである:

  • グリーン水素5400万tというのは、現在供給できる量をはるかに上回る。グリーン水素の生成は現在ほとんど行われていないが、電解装置の容量から算出される生成能力は増加している。
  • 再エネ電力2,700TWhというのは、2023年における世界の年間再エネ発電量の大部分を占める。世界の太陽光と風力による発電量は3,935TWhで、そのうち太陽光だけで1,600TWhとなる。

一方で、変化は速いペースで訪れている:

  • 再エネ発電量は現在、飛躍的に増加している。2021年の世界の太陽光発電量は1,000TWhであったため、2年で60%増加したことになる。
  • 2024年には約600GWのソーラー設備容量が新設されるとされると推定されている。砂漠地帯では、これにより年間約900TWhの発電が可能となる5。したがって、世界の鉄鋼生産を脱炭素化するために必要なグリーン水素を生成するには、1,800GWのソーラー設備容量、つまり2024年に設置されるソーラーパネルの3倍の設備容量が必要となる。このためには、約5万km2の面積の砂漠にソーラーパネルを設置する必要がある。これは西オーストラリア州の面積の2%に相当する。
  • 国際エネルギー機関(IEA)のネットゼロ排出(NZE)シナリオでモデル化された世界のネットゼロ経済では、今から約25年後の2050年には合計7万6,838TWhの電力が発電され、その89%が再エネ電力となる。

図3:2050年における直接還元鉄の生産に必要な再エネ電力

数値で示されるものとは別に、現実との隔たりを埋める変革要因は数多くある:

  • 鉄鋼メーカーは、市場形成に大きな影響力を持つ電力消費の顧客である。水素への投資家がさまざまな理由で動揺している今、グリーン水素を大量かつ長期的に購入するコミットメントを示すことが、市場の発展と投資の促進に役立つだろう。
  • 一部の政府は、将来の産業戦略の一環として、また内需、政治及び安全保障上などのさまざまな理由から、グリーン水素への補助金支給に意欲的である。これらの補助金が常に適切に支給されているか否かは不明だが、補助金や国際競争が市場の進化を促すと期待できる。今日ではコスト面から実現困難とされいていても、政策が気候危機に対応する中で、明日は異なる状況となるかもしれない。
  • 現在、鉄鋼業界は、すでにより効率的な電化ソリューションを有する業界(運輸、発電、家庭用暖房など)と、グリーン水素をめぐって競争している。鉄鋼業界が、グリーンアイアンを生産し、CO2削減のためにグリーン水素を特に効果的な活用事例として認識された場合、鉄鋼メーカーが石炭から脱却するための補助金や水素供給のターゲットがより適切に設定されると期待できる。
  • DRI炉は、天然ガスと水素の混合を使用できるため、鉄鋼メーカーは今すぐDRI炉に投資し、その上で(天然ガスの使用から)100%グリーン水素の使用へ移行するタイムラインを明確に設定することで、今日からグリーン水素の供給を促進することができる。
  • グローバルな視点を持つことで、制約を軽減することができる。再生可能エネルギーが豊富で、グリーン水素やグリーンアイアンの生産に重点を置いた経済の工業化や近代化を目指す国々もある。既存の製鉄所の立地にとらわれず、より広い範囲で解決策を模索することが受け入れられれば、さらに多くの機会が生まれ、鉄鋼の脱炭素化が加速するだろう。

「太陽光発電の増加を指数関数的と表現するのは誇張ではなく、事実である。太陽光発電の設備容量はおよそ3年ごとに2倍、10年ごとに10倍の成長を遂げている。このような持続的な成長は、重要な分野においてめったに見られるものではない。そのため、人々は何が起きているのかなかなか理解できずにいる。

次に(太陽光発電が)10倍の成長を遂げるとき、それは、今世界中にある原子炉設備容量の8倍に相当する。しかも、原子炉1基を建設するのにかかる時間よりも短期間で達成できる。」

エコノミスト』2024年6月

立地が重要である

課題は、世界にグリーン水素が十分にあるかどうかだけではなく、それが適切な場所にあるかどうかである。水素を輸送するのは危険で難しく、コストもかかる。再エネ電力を長距離輸送するコストはさらに高くなる。そのため、鉄鉱石や製鉄所のある場所に水素を運ぶよりも、水素が生成される場所に鉄鉱石を運ぶ方が効率的である。
幸い、この可能性は現実味を帯びはじめている。オーストラリア、カナダ、南アフリカ、ブラジル、スウェーデンなど、鉄鉱石を保有し、グリーン水素生成の高いポテンシャルを持つ国々がある。これらの国々では、グリーン水素を使用して直接還元鉄を生産した上で、それをホットブリケットアイアン(HBI: Hot briquetted iron)として安全な形で、製鉄所に輸送することができる。また、中東諸国のように、鉄鉱石の輸入に適した立地にあると同時に、グリーン水素生成の高いポテンシャルを有する国々もある。

今後の展望

不確実性が高まるこの時代にあって、3つの重要な事実を押さえておく必要がある。1つ目は、鉄鋼生産が世界のCO2排出量の11%を占めているということ。2つ目は、取り返しのつかない気候危機を回避するため、産業の変革が強いられており、行動するための時間は限られているということ。そして最後に、鉄鋼生産の技術的な特性から、2020年代に行われる投資決定が、2040年代や2050年代の生産のあり方に大きな影響を与えるということだ。つまり、これからの5年間、2020年代の終わりまでが非常に重要な時期となり、鉄鋼業界が2050年にネットゼロ社会の実現に貢献できるかどうか、その大きな分岐点に立たされている。

鉄鋼業界は、石炭を使用する高炉を、グリーン水素を用いたH2-DRIに転換する計画を推進する必要がある。これが、ゼロエミッションを達成し、真にクリーンで持続可能な鉄鋼業界に向けた、現時点で唯一の既知の道である。グリーン水素1kgあたり25kgのCO2削減が見込まれており、その他の業界での用途と比べても、貴重な資源であるグリーン水素の使用方法として最も効果的である。

グリーン水素をH2-DRIに使用することは、鉄鋼業界内の他の用途と比べても圧倒的に効果的である。鉄鋼メーカーは、石炭の使用を続けながら部分的な排出量削減のためにグリーン水素を使用するのではなく、H2-DRIへの投資を推進するべきである。

現時点において、最も迅速かつ安価にこれを実現する方法は、グリーン水素の生成ポテンシャルが高い地域でホットブリケットアイアン(HBI)を生産し、それを製鋼工程および仕上げ設備がある国や地域に輸送することであろう。

鉄鋼業界をゼロエミッションにして気候変動を食い止めることが成功するかどうかは今日の決断にかかっている。そのためには、水素の適切な使用方法と不適切な使用方法を明確に分けることが極めて重要である。

これは、『スティールウォッチ「わかる鉄と脱炭素」シリーズ』の一部で、複雑に絡み合った問題を整理し、業界で広く語られる主張を正確に検証することで、鉄鋼業界の脱炭素化を推進する理解と勢いを高めることを目的とする。

シリーズの第一弾である「鉄鋼生産が気候変動を引き起こす理由 ー 変革への道を探る」では、高炉で生産される鉄鋼が気候変動を加速させる理由と、その課題を克服するための方法について解説している。

文末脚注

  1. 気候変動対策に有用な「グリーン水素」だと認められるためには、既存の送配電網とは別に、追加的な再生可能エネルギーから生産されている必要がある。 これは、単にクリーンエネルギーを他の既存の用途から奪い、その結果として他の分野が化石燃料由来のエネルギーに依存し、排出削減が実現されない状況を避けるためである。この点には議論の余地がある。実際、クリーンエネルギーは今後しばらくの間、さまざまな用途で競争が予想されるため、新しいプロジェクトであっても、新しいプロジェクトであっても、排出削減において他の用途とのトレードオフが生じる。
  2. Yilmaz, C., J. Wendelstorf and T. Turek, Modeling and simulation of hydrogen injection into a blast furnace to reduce carbon dioxide emissions, Journal of Cleaner Production, 15 June 2017 Shatokha, V, Modeling of the effect of hydrogen injection on blast furnace operation and carbon dioxide emissions, International Journal of Minerals, Metallurgy and Materials, 22 August 2022. ここで学術論文が使用されているのは、鉄鋼メーカーが自社プロジェクトに関する十分なデータを開示しておらず、外部の利害関係者が使用される水素の量とCO2削減量の関係を計算できないためである。
  3. Meunier, N., R. Chauvy, S. Mouhoubi, D. Thomas and G. D. Weireld, Alternative production of methanol from industrial CO2, Renewable Energy, 2020 and Ali, S. S., S. S, Ali and N. Tabassum, A review on CO2 hydrogenation to ethanol: Reaction mechanism and experimental studies, Journal of Environmental Chemical Engineering, 2022. ここで学術論文が使用されているのは、鉄鋼メーカーが自社プロジェクトに関する十分なデータを開示しておらず、外部の利害関係者が使用される水素の量とCO2削減量の関係を計算できないためである。CO2再利用の原料として水素を使用する点に関して、提供された数値は製品のライフサイクルにおけるその後の状況を考慮していない。製品の種類によっては、生産に利用されたCO2が、最終的に大気中に放出される可能性がある。
  4. Nicholas, S. and S. Basirat, Carbon Capture for Steel? CCUS will not play a major role in steel decarbonisation, Institute of Energy Economics and Financial Analysis, April 2024. Transition Asia, 解説:鉄鋼業界における炭素回収と高炉の排出削減, 2024年4月.
  5. 1GWの発電容量は、1時間あたり1GWh、またはフル稼働(容量係数100%)で24時間365日運転した場合、年間8760GWh(1GW × 24時間 × 365日)を発電することができる。しかし、ソーラーパネルの実際の出力は天候条件に依存するため、容量係数が100%になることはない。

主要⽤語

直接還元製鉄(DRI法)/ ⽔素直接還元製鉄(H2-DRI)

DRI法(直接還元製鉄)とは、⾼炉に代わる製鉄技術である。⾼炉は、⽯炭を必要とするが、DRI法では⽯炭、天然ガス、⽔素など幅広い材料を使⽤して酸化鉄を還元できる。

現在、DRI法は主に天然ガスを使⽤している。しかし、グリーン⽔素を使⽤することで、CO2排出量をゼロに近づけることができる。このように⽔素を使⽤するDRI法を、H2-DRI(⽔素直接還元製鉄)と呼ぶ。

なお、DRIという用語は、プロセスそのものだけでなく、生成物である直接還元鉄(direct-reduced iron)を指す場合もある。日本語表記においては、生成物である直接還元鉄をDRI、プロセスをDRI法と表記する。この直接還元鉄は、電炉や、電気溶融炉と転炉を組み合わせることで鋼に生産されるが、その過程では他にもいくつかの工程が必要である。

水素 / グリーン水素

⽔素(H2)は、⾼エネルギーかつ炭素を含まない分⼦である。しかし、⾃然界では単体でほとんど存在せず、化⽯燃料や再⽣可能エネルギーなどの⼀次エネルギー源を使って⽣成しなければならない。

⽔素の気候変動対策への効果は、その⽣成⽅法によって異なる。脱炭素化の⼿段として効果的な⽔素は、ニア‧ゼロエミッションの⼯程で⽣成される必要がある。これは「グリーン⽔素」または「化⽯燃料フリー⽔素」と呼ばれ、現時点では再⽣可能エネルギーによる電⼒(再エネ電⼒)を動⼒源とする電解装置で⽔から⽣成される⽔素を意味する。

バージン鉄(Virgin iron) / 鉄鉱石由来の鉄源

バージン鉄とは、鉄鉱石から直接生産される鉄源を指す。スクラップ鉄を溶融・加工して得られる鉄源とは区別される。

鉄源

鉄源とは、製鋼工程において使用される主要な原料を指し、主に銑鉄(せんてつ)、直接還元鉄(DRI)、およびスクラップ鉄(リサイクル鋼材)がある。銑鉄は、原料炭を使う高炉において鉄鉱石を還元して得られる鉄源である。一方、直接還元鉄は製鉄工程の一つであるDRI法を通じて得られる。なお、DRI法においてグリーン水素を還元剤として得られた鉄源はニア‧ゼロエミッションの⼯程によって生産されたことからグリーンアイアンと呼ばれる。

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