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日本製鉄、気候変動対策への遅れを指摘する初めての株主提案が今なぜ?

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©︎Alamy.com/Satoshi Oga.

世界第4位の鉄鋼会社である日本製鉄は、石炭を原料とする製鉄への依存のため、気候変動対策で国際基準を満たせず、競合他社にも遅れをとっていることが明らかになった。

スティールウォッチの最新報告書によると、日本製鉄の目標や計画は、1.5℃シナリオに沿った排出削減の道筋から大きく外れている。 これまでのところ、同社の国内におけるの排出削減は、クリーンな生産への移行というより、いくつかの高炉の閉鎖によるところが大きい。 日本製鉄のグローバル展開への意欲はますます高まっているが、全ての排出量が気候変動目標に含まれているわけではない。

その結果、日本製鉄は重要なステークホルダーからの圧力に直面している。 本年6月21日に予定される年次株主総会を目前に「脱炭素化戦略を改善し、株主の長期的利益を守るように求める」株主提案が行われた。 その3つの提案 は、投資家エンゲージメントグループのオーストラリア企業責任センター(Australasian Centre for Corporate Responsibility: ACCR)、一般社団法人コーポレート・アクション・ジャパン、およびヨーロッパ最大手資産運用会社の一つである英リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメントによる共同株主提案で、 日本製鉄が2021年にカーボンニュートラルへのロードマップを発表して以来初めて、同社の気候変動対策に関する株主提案として公式に提出された。

また、日本製鉄によるUSスチールの買収は同社の海外ビジネス展開における鍵を握るが、さまざまな面で批判を受けてきた。 もしこの買収が成功すれば、日本製鉄は世界第2位の大手鉄鋼メーカーとして、より大きな責任と監視の目にさらされることになる。 米国の著名な地域社会や全国的な環境NPOは、日本製鉄による、石炭を使用する施設から生じる汚染というUSスチールの負の遺産への対処について、疑問を呈した。彼らは同社がグリーン製鉄技術への投資を通じ、継続的な競争力を確保するために十分な行動をとるかどうか、問いかけている。これらの団体はバイデン政権に対し、買収の承認を石炭の段階的廃止と結びつけ、米国の気候政策と産業政策の目標に合致させるよう要請した。

日本製鉄の脱炭素への取り組みはどこまで進んでいるのか、あるいは遅れているのか? スティールウォッチは日本製鉄のCO2排出量(関連電炉メーカーと海外資産を除く)が、現在から2050年の間に「従来通り」、「公表政策」、また同団体が想定する「グリーンな移行」という3つの異なるシナリオでどのように比較されるか、シミュレーションを行った。その結果、同社の脱炭素化戦略は、気候変動の安定化に貢献しているとは到底言い難いことが判明した。

日本製鉄の脱炭素化計画はCOURSE50およびSuper COURSE50に重きを置いているが、スティールウォッチの分析は、高炉に水素を注入するこれらの政策が、石炭を原料とする生産を永続させる、誤った解決策であることを示している。 仮にこれらの技術が実施できたとしても、Super COURSE50は2040年以降に排出量を50%削減するに留まり、その結果得られる鉄鋼は、「排出ゼロに近い鉄鋼 (near-zero steel)」の定義をはるかに上回るものである。

鉄鋼部門は世界の温室効果ガス排出量の7%を占めており、早急に脱炭素化する必要がある。スウェーデンのSSABやH2グリーン・スチール、米国クリーブランド・クリフス、韓国ポスコなどのライバル鉄鋼メーカーが、排出ゼロに近い鉄鋼を実現する製鋼技術を商業化しており、グリーン・スチールへの競争は今すでに始まっている。 これらの技術は、再生可能エネルギーを元として生産される水素を使用した鉄鉱石の直接還元により、石炭を原料とする製鉄と代替可能である。 日本製鉄の競争力は、技術革新と脱炭素化を事業戦略の中心に据えることができるかどうかにかかっている ――果たして経営陣は、株主の声に耳を傾けるだろうか?

報告書を読む:
スティールウォッチ『あまりに遅く、不十分:日本製鉄の気候変動対策の検証』(2024年5月31日) https://bit.ly/3wXlQO7

英語版 “Too Little Too Late: Corporate Climate Assessment of Nippon Steel 2024.” SteelWatch. 31 May, 2024.
https://steelwatch.org/reports/too-little-too-late-corporate-climate-assessment-of-nippon-steel-2024/

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